小さな恋 大きな恋


06

11


リョーマが手塚にアメリカに行くとも日本にいるとも言わないまま時が過ぎ、倫子がアメリカへ行かなければならない日が3日後に迫っ
ていた。明日までに決めて欲しいと倫子がリョーマに言った次の日・・・。


その日は朝からリョーマの体調があまり良くなかった。少し微熱っぽかったし、今日は体育もあったので倫子は学校を休ませようとした
のだが、リョーマがそれを拒んだ。少しでも学校に行きたかったからだ。倫子は渋々了承したが体育は絶対休むことを条件に学校へ行
かせた。その際、手塚家へ連絡することも忘れずに。
「いい?リョーマ。しんどくなったら国光君か先生か近くにいるお友達に絶対言うのよ。我慢しちゃだめだからね。」
「うん、わかった。」
「それに今日は日差しが強いから絶対帽子をかぶって外に出ること。走り回っちゃだめ。体育は外だったわね。体育の時は日陰にいさ
してもらいなさいよ。」
そう言って倫子はリョーマにリョーマが大事にしているFILAの帽子をかぶせた。するとリョーマはその帽子をかぶれることが嬉しいの
か笑顔で返事をした。
「はーい。」
そんなリョーマに倫子は少しため息をついた。
「もう、本当にわかってるの?」
「わかってるよー。」
「それならいいけど。」
「じゃあ、行って来まーす。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
「はーい。」
倫子に何回も注意されてリョーマは家を出た。



リョーマが家を出るとすぐそこに手塚がリョーマを待っていた。
「おはよう!国光!」
手塚の姿を見つけるとにっこり笑って挨拶をした。
「おはよう、リョーマ。大丈夫か?」
「ん?大丈夫だよ。でも今日は体育できないけどね。」
「つらくなったら俺に言えよ。」
「うん!ありがとう国光!」
そして今日はいつもより少しゆっくりのペースで学校へ向かった。




―そして体育の時間

「あれー?リョーマ、着替えないの?」
つい此間一緒に帰ったショートヘアーの子が体操着に着替えずに座って皆を待っているリョーマに気付いて聞いてきた。
「うん。今日はちょっと熱っぽいから体育はできないの。」
「そうなの?大丈夫?」
「大丈夫。」
「しんどくなったら私等に言ってね。」
「そうよ。頼ってくれていいから。」
ロングヘアーの子とポニーテールの子も話に入ってきた。
「ありがとう。着替えできた?じゃあ行こう。」
3人に笑顔で言って、3人が着替え終わったのを確認すると運動場へ出た。


運動場へ出てもまだ休憩時間があったのでリョーマを気遣って座って日陰でおしゃべりしていると手塚、不二、乾の3人が4人のもとへ
やってきた。
「リョーマちゃん大丈夫?」
「大丈夫だよー。皆心配しすぎ。」
「それだけ皆リョーマのことが大事なんだ。」
「そう?私も皆のこと好きだよー。」
「リョーマ、なんだか違う気がするよ・・・。」
等とワイワイやっていると突然バッとリョーマがかぶっていた帽子が取られた。
「あっ!!」
「お前ズル休みかー?返して欲しかったら取りに来いよー!!」
見るとクラスの男の子で結構クラスの女の子をいじめてる子だった。リョーマの帽子をかぶって運動場の真ん中辺りに立っていた。
「リョーマ、・・・」
「返して!!」
手塚が自分が取り返しに行くからリョーマはここにいろと言う前にリョーマは立ち上がり、走って帽子を持ってる子のところへ行ってしま
った。
「返してよ!!私の帽子!!」
「へん!取れるもんなら取ってみろよ。」
男の子はすばしっこい動きでリョーマの手から逃げていた。
「ねぇ返してよ!!それ大事な帽子なの!!」
「やだよ。お前が取ったら返してやるよ。」
「お願い・・・ごほ・・・。」
男の子を追いかけていると突然リョーマが咳き込み出した。
「ごほっ・・・ごほ・・・っ。」
「リョーマ!!!」
もう少しで地面にぶつかるところで手塚がリョーマを抱きとめた。
「・・・ごほっ・・・はぁはぁ・・・っ。」
「リョーマ!大丈夫か?!」
「越前さん!!」
その時、丁度先生がやってきてリョーマの様子を見るとリョーマを抱き上げて全員に指示を出した。
「今から先生は越前さんを保健室に連れて行きます。あなたは一緒に来て説明してちょうだい。みんなは悪いんだけどみんなでドッヂ
ボールをしていてください。」
そしてリョーマとリョーマの帽子を取った男の子を連れて保健室へ行ってしまった。